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頚椎骨折と後遺症

頸椎骨折とは

頚椎骨折とは、7つからなる脊椎の頚部の骨(首の骨)が折れたことを意味します。また頚椎脱臼とは、頚椎をつなぐ靭帯が損傷し、隣接する頚椎の2つ(またはそれ以上)の骨が異常に離れてしまい、不安定になった状態を指します。

頚椎の骨折や脱臼では、その両方が発生してしまうこともあります。頚椎は脊柱の中で最も可動性の高い部分であり、最も怪我をしやすいところです。また特に自動車事故など、高エネルギーの外傷で負傷することが多い特徴があります。

頚椎によって囲まれた脊柱管には、神経の束である脊髄が通っています。この神経は、わたしたちの手足の運動や感覚のコントロール、呼吸運動のコントロール、また排尿や排便をコントロールしています。したがって骨折の衝撃で脊髄が損傷されると、その程度によっては後遺症として手足の麻痺、呼吸障害などさまざまな症状が出る可能性があり、場合によっては死に至ることもあります。

頸椎
 

頚椎骨折の種類

頚椎の骨折や脱臼は、その部位や位置、損傷・骨折のパターンによって分類されます。頭に近い頚椎と胸に近い頚椎では、役割が違い、頚椎の形も異なるため、上位頚椎(C1-C2)と下位頚椎(C3-C7)の損傷に分類します。

それでは頚椎骨折の種類を詳しく見ていきましょう。

第一頚椎(C1)骨折(ジェファーソン骨折)

ジェファーソン骨折とは、7個あるある頸椎の内、頭蓋骨に一番近い頸椎、「環椎」の骨折です。破裂骨折となり、頚髄損傷を起こし生命に関わります。

第一頚椎の骨折は、脊椎骨折全体の約2%を占めています。

高いところから、頭をしたに落下して地面にぶつかるような事故で発生します。このような事故で、頭蓋骨が第一頚椎の軸方向(垂直方向)に圧迫され、第一頚椎が最も弱い部分(前弓と後弓)で破裂します。別名、ジェファーソン骨折(Jefferson骨折)としても知られています。なお、第一頚椎は別名環椎ともいいますので、環椎骨折ともいいます。

第一頚椎骨折の診断は、正面からのX線写真でC1-C2関節を観察することで行います。ただし、X線検査では一部の骨折しか見つからず、CTスキャンが必要となります。

第二頚椎(C2)歯突起骨折

第二頚椎歯突起骨折は、頚椎骨折の5~15%を占めます。転倒や交通事故がきっかけで起こることが一般的です。

歯突起とは、軸椎とも呼ばれる第二頚椎にある突起状の構造物ですが、この突起を軸にして、頭を回すことができるようになっています。

首の過伸展により第二頚椎歯突起骨折が生じた場合、後方偏位が生じることがあります。診断はCT画像でのみ可能です。

ハングマン(hangman)骨折

外傷性軸椎(C2)骨折は、ハングマン骨折ともいい、首の過伸展と脱臼に起因する骨折です。
交通事故に起因することが多い頸椎骨折です。
絞首刑に処せられた受刑者の頚椎にみられるタイプの骨折であることから、この名前がつけられています。この骨折は、C2がC3上で大きく転位することが多いにもかかわらず、脊髄損傷につながることはほとんどありません。

下部頚椎の骨折

下部頚椎の骨折は、首の過伸展や過屈曲、垂直方向へ圧迫など、高いエネルギーが頚椎に加わることで生じます。骨折した場所により、脊髄を損傷する可能性があり、損傷部位によって手足の運動・感覚麻痺、呼吸不全、排便や排尿の障害などの症状を認めます。

頚椎骨折の症状

頚椎骨折は多くの場合、非常に強い首の痛みを伴い、頭の動きが困難または不可能になることがあります。頚椎の骨折だけであれば、痛み以外の症状はありませんが、脊髄の損傷を合併すると損傷された脊髄に関する症状がでてきます。また脊髄の損傷の程度によって、完全な損傷と不完全な損傷に分けられます。
例えばC1~C3と高い位置の頸椎骨折に伴う脊髄損傷では、呼吸をするために必要な横隔膜の動きをコントロールしている神経が損傷されてしまうため、呼吸ができなくなってしまうことがあります。完全に脊髄が損傷していると、一生人工呼吸器を外すことができなくなることもあります。

また脊髄損傷の部位に合わせて、支配している神経領域の症状がでます。この場合、完全損傷であれば全く動かせない、不完全損傷であれば、多少動かすことができます。具体的にはC4~C5の損傷だと、全ての手足が動かしにくくなったり、動かせなくなったりします。C6やC7の損傷だと、下肢は麻痺しますが肩から手までは動かすことができます。

なお麻痺は一時的な場合と永続的な場合があります。

さらに、手足にしびれを感じる場合(不完全損傷)や全く感覚が消失する場合(完全損傷)もあります。

排便や排尿も障害されることがあります。便意や尿意を感じないだけでなく、排便や排尿するために必要な筋肉を動かすことができなくなってしまいます。

自律神経が損傷されることもあります。自律神経機能が失われてしまうと、起き上がったときの血圧のコントロールがうまくできなくなってしまいます。そのため寝た状態から車椅子に座らせると血圧が著しく下がってしまうことがあります。また自律神経機能が障害されると、体温の調節がうまくできず、汗をかけなくなることがあります。
頸椎と脊髄損傷

 

頚椎骨折の後遺症

頚椎骨折(首の骨の骨折)の後遺症は、主に2つあり、骨折した部位で首の動きが悪くなってしまう運動障害と骨折が治る過程で変形して治ってしまい、首が曲がった状態で固定されてしまう変形障害があります。
脊髄損傷を合併していれば、後遺症は複雑になります。

損傷を受けた脊髄は、元通りに回復することは非常に困難となります。したがって、受傷時にみられた症状が、そのまま後遺症として残ります。

呼吸ができなくなった場合は、一生人工呼吸器がなければ生きていくことができなくなります。

手足が完全に麻痺してしまった場合は、その後の人生では顔しか動かせなくなりますので、行動範囲が非常に制限されます。

排尿や排便が障害されると、カテーテルを使用して定期的に人工的に排尿する必要がありますし、介護者が指を使って便をかき出すことも必要となります。

リハビリ

頚椎骨折だけの場合、頚椎を固定する治療が行われますが、手足の動きは制約を受けないため、リハビリが必ずしも必要となることはありません。

他方、脊髄損傷を伴う場合はリハビリが必要です。ただし、残念ながら損傷された脊髄は回復が望めず、失った機能が大きく回復することも望めません。

リハビリの目的は、残された身体機能を生かし、自立した生活ができるようにすることにありますが、残念ながら完全な社会復帰は困難な場合もあります。

なお、残された身体機能だけで電動車椅子を動かしたり、コンピューターを操作して文書を作成したりすることもできます。このような機器を動かす訓練も、リハビリの一環として行われます。

治療

首の骨折に対する治療は、骨折の部位や重症度によって異なります。

脊髄に影響を及ぼさない骨折の場合は、首の固定具を装着し、骨折が治癒するまで安静にします。また、痛みを抑えることが望ましいです。
これはハローベストと呼ばれる固定具がよく利用されています。硬いベストを上半身に着せ、ベストに接続した金属製の装具を頭部にピンで固定します。これにより、首を動かすことができなくなります。通常は3ヶ月ほど骨折の治癒に時間を必要としますが、この間このベストの装着を継続します。

骨折が重症の場合は、骨を固定して正しい位置に戻すために手術が必要になることがあります。その際には、より強力な金属製の固定具を頚椎に直接装着します。

脊髄を損傷した骨折の場合、選択肢は非常に限られています。脊髄は自然に治癒することができません。かつては、急性期にステロイドを大量に使用して治療していましたが、最近は有益な治療ではない可能性が示唆されており、現在では標準的治療とはなっていません。

脊髄損傷が疑われる場合、または脊髄損傷を引き起こす可能性のある要因がある場合は、直ちに治療を開始する必要があります。損傷した脊髄に対する圧を解除して、頚椎を早く安定させるほど、回復の可能性が高くなると考えられています。

また最近は脊髄損傷に対し、再生医療の技術を応用して治療する試みが注目されています。
骨髄などから採取した幹細胞を注入することで、失われた神経細胞が機能回復することが報告されています。まだ再生医療を行うことができる医療施設は限られていますが、今後多くの施設で実施されることが期待されています。

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治療費

脊椎骨折の治療費ですが、骨折の程度や脊髄損傷の有無によって大きく異なります。

2003年に日本脊髄障害医学会が国内5施設を対象に行った調査によると、脊髄損傷による完全麻痺のために、入院治療を要した患者の総医療費は、10,975,186円となっていました。入院期間は400日を超えており、1日あたりの医療費は、31,617円でした。

治療中に合併症が生じた場合、総医療費は9,629,877円でしたが、合併症のない場合の6,918,936円と比べて、明らかに高額になっていました。

このほか、複数の条件で必要となった医療費を算出していますが、いずれの場合も600万円程度は必要となることがわかりました。
(出典:日本脊髄障害医学会 http://www.jscf.org/jscf/SIRYOU/rihabiri/chiryouhi.htm

支払いについては、公的健康保険の適用を受けることができれば、1~3割の負担となります。なお実際は、高額療養費制度を利用することができ、年収や年齢に応じて自己負担額が大幅に軽減されます。

まとめ

頚椎骨折及び頚椎骨折に伴う脊髄損傷についてご説明をいたしました。

首を骨折すると、治療として首を固定する必要がありますので、大きく行動が制限されます。また脊髄を損傷すると、一生にわたって手足を動かせなくなってしまう可能性もあります。このような外傷は、なんとしてでも避けたいと思うのではないでしょうか?

再生医療は、今まで不可能と考えられていた脊髄損傷の治療に一定の効果を認めています。今後、さらに広く治療できるようになり、脊髄損傷の影響で生涯にわたって苦しむ人がいなくなることを期待したいものです。

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この施術ページの監修医師

貴宝院 永稔

貴宝院 永稔(きほういん ながとし)

医療法人慶春会 福永記念診療所 部長
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

学歴・職歴

平成15年3月
大阪医科大学卒業
平成15年5月
大阪医科大学附属病院にて初期研修
平成17年4月
大阪医科大学附属病院にて初期研修 修了
平成17年5月
大阪医科大学(リハビリテーション科)レジデント就任
平成19年3月
大阪医科大学(リハビリテーション科) 退職
平成19年4月
大阪医科大学大学院医学研究科(リハビリテーション科)入学
平成21年4月
医療法人伯鳳会 はくほう会セントラル病院 入職
平成23年3月
大阪医科大学大学院医学研究科卒業
平成30年2月
福永記念診療所 部長に就任

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