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自律神経過反射とは

自律神経過反射(AD:Autonomic Dysreglexia)は、主に第5,第6胸髄(T5,T6)より上の領域で脊髄が損傷した患者さんに起こる合併症の一つです。
高血圧による脳内出血を引き起こし、命の危険を伴う可能性があるため、すみやかに原因を取り除く必要があります。
今回のドクターブログは、自律神経過反射のメカニズムや症状、予防や対象方法などについて分かりやすく解説します。損傷部位がT5,T6レベル以上の脊髄損傷の患者さんや、そのご家族の方はぜひご覧ください。

自律神経過反射の症状

自律神経過反射による激しい頭痛

自律神経過反射が起こると、主に下記の症状が現れます。必ずしも下記の症状が全て現れるわけではありません。
・高血圧:血圧が200/100mmHgを超える場合もあります。
・頭痛:「激しく殴られるような」非常に激しい頭痛が起こります。
・視力異常:「目の前に点が見える」「視野がぼやける」といった症状が起こります。
・顔面の紅潮
・損傷レベルよりも上部での発汗
・損傷レベルよりも下部で鳥肌が立つ
・鼻づまり
・脈拍が60回以下/分になる徐脈

自律神経過反射の原因とメカニズム(機序)

自律神経は、内蔵の働きや代謝・体温を調整し、自分の意思とは関係なく生命維持に関する活動をコントロールしてくれています。例えば、熱いときに汗をかくということは自分の意識ではなく、自然に起こりますよね。それ以外にも食べ物を消化したり、血管を広げたり狭めたりすることで血圧をコントロールしたりしてくれています。
脊髄は、自律神経が情報を伝達をする大切なルートです。
この自律神経が過度な反射を起こすことが「自律神経過反射」なのですが、その原因とメカニズム(機序)を見ていきましょう。

原因

自律神経過反射の主な原因を下記にご紹介します。自律神経過反射が起こった場合には、下記の原因を速やかに取り除く(取り除くことができる事象に限ります)ことが最優先となります。

    • 膀胱の充満や拡張:排尿が上手くいかず、膀胱に尿が充満している
    • 宿便:ひどい便秘が起こっている、お腹が張っている
    • 感染:尿路からの感染による膀胱の感染や肛門・痔からの感染
    • 褥瘡(じょくそう):床ずれ
    • 骨折や打撲
    • 皮膚への刺激:切り傷、皮膚の感染症、擦り傷
    • やけど:熱湯や日焼けによるやけど
    • きつい、締め付けが強い衣服
    • 陥入爪(かんにゅうそう):爪が皮膚に食い込むことで炎症や感染を起こします
    • 性行為:性行為時の過度な刺激や、射精による刺激

メカニズム(機序)

次に自律神経過反射が起こるメカニズム(機序)を解説します。
自律神経過反射のメカニズム(機序)

①脊髄が損傷した領域よりも下位への刺激(主に痛みなど)が起こる

例えば、上記の「原因」で見たようなひどい便秘や尿の溜めすぎによる膀胱の充満などです。

②~③痛みなどの刺激を、脊髄を介して脳に送ろうとするが、損傷した領域で情報が遮断される

身体が感じた刺激は、脊髄を介して脳に情報を送ろうとしますが、脊髄を損傷している場合、損傷したレベルで情報が遮断されてしまうため、痛みや熱さなどは感じません。

④~⑤自律神経が反射し、血管の収縮が起こり、血圧が上昇する

痛みなどの刺激は脳にまで伝達はされませんが、その刺激によって自律神経が反射し、血管の収縮が起こり、血圧を上昇させます。

⑥神経受容体からの情報により、脳は血圧を下げようとする

血圧の上昇を感知した心臓と血管にある神経受容体は、脳に血圧が上昇しているという情報を伝達します。脳はその情報に基づき、血圧を下げるために血管を拡げる指令を送ります。

⑦血圧は下がらず、徐脈、顔面紅潮が起こる

血圧が下がらない理由

脳は血管を拡げる指令を出しますが、損傷した領域よりも下位にある血管に対して指令を届けることができません。それは、第6~第10胸髄(T6~T10)の領域がほとんどの血管に指令を伝達する役割を持っているからです。そのため、血管は収縮を続け、血圧は下がりません。

徐脈

脳は心臓に対し、ゆっくりと鼓動するように指令を出します。これが徐脈の原因です。

顔面の紅潮

損傷した領域よりも上位にある血管に対しては、「血管を拡げる」という脳からの指令が届くため、血管が拡張し、通常よりも多くの血流が生じます。それによって起こるのが「顔面の紅潮」です。

自律神経過反射の対処法と看護

ここまで、自律神経過反射の原因やメカニズム、兆候となる症状などを解説しました。次は、自律神経過反射が疑われる方に対しての対処法や看護について見ていきましょう。

対処法

自律神経過反射への対処は、速やかに「血圧を下げる」ことと、「刺激の原因を取りのぞく」ことが大切です。

血圧を下げる

血圧を下げるために、患者さんが横になっている場合は、上半身を起こして、座位をとってください。足を下げることができる場合には下げることも効果的です。
自宅に血圧計を備え付け、使用の方法についても学んでおきましょう。

自律神経過反射が疑われる際使用する血圧計

原因を取り除く

次に、先ほど解説しました「原因」を取り除きます。いくつか具体例をご紹介します。

膀胱

カテーテルの詰まりやねじれが無いか、収尿袋が一杯になっていないか確認しましょう。

宿便(便秘)

便通をチェックしましょう。便が直腸内にある場合にはご家族や看護師さんによって、手で排便させる必要があります。ご家族が行う場合には座薬や浣腸を使用し、ゆっくり摘便します。病院で看護師や医師による摘便の場合、麻酔薬を肛門から挿入した上で摘便を行います。(摘便による刺激によって過反射が起こることを防ぐためです)

皮膚の状態

皮膚の状態を確認します。床ずれが無いか、切り傷や擦り傷などが無いか、陥入爪が無いか
などを確認しましょう。締め付けの強い衣服が原因となっていることもありますので、確認の際に衣服はゆっくりと脱がせてください。

原因が見つからない場合

原因が見つからない場合には、慌てずに救急に連絡をし、速やかに医療機関を受診してください。また、緊急時に備え、かかりつけの病院を確保しておきましょう。

自律神経過反射の予防法

次は、自律神経過反射の予防法についてご紹介します。これらのことを日常的にチェックすることで、自律神経過反射はある程度予防することが可能です。

    • 排尿の確認:排尿が規則正しく行われているか、カテーテルからきちんと尿が流れているか確認しましょう。
    • 便やガスの確認:排便が規則正しく行われているか、お腹が張っていないか確認しましょう。
    • 皮膚の状態の確認:脊椎損傷の患者さんは、痛みや熱さを感じられません。そのため、皮膚に傷や赤み、水ぶくれなどの異常が無いか確認しましょう。

    まとめ

    自律神経過反射について解説しました。自律神経過反射は、生命に関わる可能性のある状況ですので、しっかりと予防をし、万が一の際にも適切な対応をすることが大切です。
    自律神経過反射は、すみやかに原因を取り除く必要があることから、これらの症状が現れ、医療機関を受診する際には日本せきずい基金ウェブサイトにある「自律神経過反射についての医学的警告カード」の携帯が役に立つでしょう。こちらからダウンロードし、万が一の際に備えましょう。

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    この施術ページの監修医師

    貴宝院 永稔

    貴宝院 永稔(きほういん ながとし)

    医療法人慶春会 福永記念診療所 部長
    株式会社ニューロテックメディカル 代表取締役
    株式会社セルリンクス 代表取締役
    医療法人交和会 理事長

    学歴・職歴

    平成15年3月
    大阪医科大学卒業
    平成15年5月
    大阪医科大学附属病院にて初期研修
    平成17年4月
    大阪医科大学附属病院にて初期研修 修了
    平成17年5月
    大阪医科大学(リハビリテーション科)レジデント就任
    平成19年3月
    大阪医科大学(リハビリテーション科) 退職
    平成19年4月
    大阪医科大学大学院医学研究科(リハビリテーション科)入学
    平成21年4月
    医療法人伯鳳会 はくほう会セントラル病院 入職
    平成23年3月
    大阪医科大学大学院医学研究科卒業
    平成30年2月
    福永記念診療所 部長に就任

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