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医療法人慶春会福永記念診療所、ドクターブログ

再生細胞薬「SB623」とは?

絶対に不可能と云われてきた脳の再生に取り組むサンバイオ社が、18年間に渡って開発してきた再生細胞薬「SB623」。健常者の細胞を培養して患者さんに投与する「他家移植」だから、間葉系幹細胞を大量培養して患者さんの脳に注射し、神経回路の再生を促すことが出来るのです。そんな夢の再生細胞薬「SB623」についてのご紹介です。

サンバイオ社

サンバイオ社は、2001年にアメリカのカリフォルニアで設立された再生医療の会社です。今までの医療では根治治療出来なかった中枢神経系領域の疾患を対象に、再生細胞医薬品の研究や開発、製造・販売を行っています。2013年に日本法人サンバイオ㈱が設立され、2014年には企業再編を経て、現在では日本法人が親会社になっています。

SB623

臨床試験

SB623については、会社設立時から研究を重ね、アメリカでは2010年にFDA(※)から臨床試験を承認・認可されました。
※FDA(アメリカ食品医薬品局):アメリカ合衆国保険福祉省配下の政府機関です。食品や医薬品に限らず、化粧品や医療機器、たばこから玩具まで、消費者が通常の生活で接する機会のある製品について、その許可や違反品の取り締まりなどを専門的に行います。
2011年に慢性期脳梗塞のPhase1/2a臨床試験を開始、2014年にはアメリカとカナダで慢性期脳梗塞の共同開発、ライセンス契約を大日本住友製薬株式会社と締結しています。
なお、2016年には外傷性脳損傷についてPMDA(医薬品医療機器総合機構)から日米グローバル臨床試験(Phase2)の治験が受理され、アメリカでは2016年7月から、日本でも10月から治験を開始されています。現在、慢性期脳梗塞についてはアメリカでサンバイオ社と住友製薬社が共同でPhase2の臨床試験、外傷性脳損傷については日米共同でPhase2の臨床試験を行っています。

SB623のメカニズム

従来、脳内には幹細胞が存在しないとされてきましたが、1998年慶応義塾大学の岡野教授が脳内の幹細胞存在を発見したことで、幹細胞による脳治療の可能性が出てきたのです。
健常者の骨髄液から採取した間葉系幹細胞を大量培養して、患者さんの脳に移植するので、自己移植と比べてコストを低く抑え、量産化が可能になります。また、量産された細胞の冷凍保存も可能なのです。
移植された幹細胞が様々なサイトカインを分泌します。そのサイトカインによるオートクライン効果や他の細胞に働きかけるパラクライン効果により幹細胞が活性化することで、脳損傷部が修復することになります。
これがSB623のメカニズムです。
投与された幹細胞が神経や血管といった細胞に分化することも確認されていますが、自家移植(自己の細胞)とは違い他家移植(他人の細胞)なので、それらの効果は劣ると考えられます。
※オートクライン効果: 細胞からの分泌物が、分泌した細胞自身に作用すること。
※パラクライン効果:細胞の分泌物が、直接拡散したり、大循環を介して遠方に送られ、分泌した細胞以外の細胞に作用すること。

手術方法

頭骸骨に直径1㎝程の穴を開けて、障害部分に細胞を移植する「定位脳手術」で行い、患者さんの身体に負担が少ないとされています。手術は1回のみで効果が持続され、投与24ヶ月後でも改善が認められています。副作用については、ほとんど認められておりませんが、一過性の頭痛が見られる場合もあるとの報告はされています。

拒絶反応

他家移植と云うことで、拒絶反応が懸念されますが、SB623においては自ら免疫応答を抑制する働きを持っているので、その心配はないとされています。
SB623に期待されるのは、患者さんの運動機能などの改善です。
たとえ全てが完治できなくても、車椅子が必要だった患者さんが杖で歩けるようになれば、患者さんや介護するご家族の負担軽減につながり、QOL(生活の質)が上がりますよね。

SB623と慢性脳出血

2020年9月14日、脳梗塞プログラムや脳出血プログラムの後期臨床試験の準備を開始したというアナウンスがありました。
SB623外傷性脳挫傷の今期中の国内承認申請に向けた準備と並行して、脳梗塞プログラムと脳出血プログラムの国内における開発を優先するそうです。また、脳出血プログラムの臨床試験は、フェーズ2またはフェーズ3からの開始を見込んでいるとアナウンスされています。

SB623の最新情報

SB623に関する最新の情報としては、2021年1月に米国神経学会の学術誌であるNeurology®オンラインに、STEMTRA試験の中間解析が掲載されたことがあります。これは脳への外傷によって慢性的に運動障害のある患者さんに、SB623を使用した臨床試験です。SB623を使用した46人と使用しなかった15人では、治療開始後6か月の時点でSB623を使用した群のほうが、ベースラインよりも有意に症状の改善を認めていました。
ただし2021年1月に予定していた、再生医療等製品に対する条件及び期限付承認制度を活用した外傷性脳損傷に対するSB623の製造販売の国内承認申請は、準備に時間を要することから、申請を遅らせることが同社より発表されています。

SB623の国内臨床試験(治験)の状況

SB623に対する臨床試験は、主に米国と日本において行われています。日本では外傷性脳損傷、米国では外傷性脳損傷と慢性期脳梗塞が対象です。なお、脳出血は現在のところまだ臨床試験の対象にはなっていませんが、今後対象に加えられる予定です。

SB623に対する臨床試験(治験)の対象疾患

SB 623については、現在2つの疾患を対象に臨床試験が行われています。ひとつが慢性外傷性脳損傷、もうひとつは慢性期脳梗塞です。いずれも脳へのダメージの結果、運動機能が障害されて長く経過している方たちです。

SB623の臨床試験(治験)の経過

通常臨床試験は3つの段階に分けて行われます。第三段階がクリアできると、実際に治療薬として使用することが可能になります。
SB623を利用した、慢性期脳梗塞に対する臨床試験は、米国において第一段階〜第二段階の一部が2011年から行われ、2014年に有効性と安全性が確認されています。さらに進んだ第二段階の離床試験は2016年から開始されていましたが、2019年に効果が芳しくなかったため中断されました。現在、対象を絞って再開することが検討されています。
SB623を利用した外傷性脳損傷に対する臨床試験は、SB623の脳梗塞に対する第一段階の臨床試験の結果をもとに第一段階をスキップさせ、第二段階から開始されています。第二段階の臨床試験は2015年に米国、2016年に日本で開始され、現在は対象患者の組み入れは終了しています。この中間解析が、2021年1月に米国神経学会の学術誌であるNeurology®オンラインに発表されていますが、有効性及び安全性が確認されています。

サンバイオのSB623開発は失敗したのか?

サンバイオは、2019年1月末に慢性期脳梗塞の患者に対して行っていたSB623の第二段階の臨床試験に効果が認められなかったことを発表しています。臨床試験では、患者を2群にわけ、片方にはSB623、もう一方には偽薬(薬としての作用はないもの)を投与し、2群で効果に差が認められるか調べています。ただ効果がなかったのは、臨床試験で採用した投与方法で効果がなかったということであり、別の投与方法や投与量で治療すれば効果がみられる可能性があります。「失敗」ではなく「効果のでない投与方法がわかった」と考える方が適切かもしれません。事実、サンバイオは2020年9月に脳梗塞のサイズが小さいものを対象に、新たに臨床試験を行うことを発表しています。

SB623の承認・実用化の状況

2021年1月に予定していた外傷性脳損傷に対するSB623の製造販売の国内承認申請は、準備に時間を要しており、申請を遅らせることが同社より発表されています。なお2019年4月、SB623は外傷性脳損傷に対する先駆け審査の対象として、厚生労働省から指定を受けています。これは臨床試験の早期の段階であっても、著明な有効性が認められる再生医療等製品の製造販売を優先審査するという制度に基づいています。
しかしながら、2021年3月現在において、SB623の実用化は、かなり準備は進んでいるものの、まだ実現していません。

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この施術ページの監修医師

貴宝院 永稔

貴宝院 永稔(きほういん ながとし)

医療法人慶春会 福永記念診療所 部長
株式会社ニューロテックメディカル 代表取締役
株式会社セルリンクス 代表取締役
医療法人交和会 理事長

学歴・職歴

平成15年3月
大阪医科大学卒業
平成15年5月
大阪医科大学附属病院にて初期研修
平成17年4月
大阪医科大学附属病院にて初期研修 修了
平成17年5月
大阪医科大学(リハビリテーション科)レジデント就任
平成19年3月
大阪医科大学(リハビリテーション科) 退職
平成19年4月
大阪医科大学大学院医学研究科(リハビリテーション科)入学
平成21年4月
医療法人伯鳳会 はくほう会セントラル病院 入職
平成23年3月
大阪医科大学大学院医学研究科卒業
平成30年2月
福永記念診療所 部長に就任

資格

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