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医療法人慶春会福永記念診療所、ドクターブログ

セマフォリン3A阻害薬が脳梗塞後遺症に効果!

順天堂大学大学院の脳神経内科の研究グループが、脳梗塞モデルラットを使って、軸索(※1)ガイダンス因子のセマフォリン3Aを薬剤でブロックして、脳組織の神経再生と運動機能回復を促進させることに成功したニュースをご紹介しましょう。

背景

日本での脳血管疾患患者は約120万人にものぼり、多くの患者さんが運動麻痺やしびれ、認知機能障害などの後遺症に悩まされています。中でも脳梗塞は脳血管疾患全体の約7割を占めて、患者さんの数は増加の傾向を示しています。最近は経静脈的血栓溶解療法や血栓回収デバイスによるカテーテル的血栓回収療法が普及し、脳梗塞の急性期治療は飛躍的に進歩しました。でも、脳梗塞のせいで一度生じた脳機能障害回復の面では、まだ十分な薬物による治療はありませんでした。

セマフォリン3A

脳梗塞後の機能回復には、神経細胞から伸びて行く軸索の再生が、損傷した中枢神経組織の緻密な神経回路再構築に重要な役割を果たします。セマフォリン3Aは軸索ガイダンス因子として、細胞間のシグナル伝達に関わるタンパク質の一種で、感覚神経系を介して骨量を制御するなどとされています。脊髄損傷モデルにおいてはセマフォリン3A阻害剤によって、損傷後の神経再生と機能障害回復が促進されると報告されていました。そこで、脳梗塞後に現れるセマフォリン3Aに着目して、慢性期における軸索再生や機能障害回復に治療目標を定めて研究が進められています。脳梗塞モデルのラットや培養神経細胞において、セマフォリン3Aがいつどのように現れるか、また、セマフォリン3Aの機能を阻害することで、軸索再生や機能回復にどのような変化があるかを検証しています。

研究内容

ラットの永久的中大脳動脈閉塞モデルを作って、peri-infarct areaにおいてセマフォリン3Aの発現を解析しました。セマフォリン3Aは脳梗塞後7日から14日まで上昇し、その後56日目まで減少しました。つまり、セマフォリン3Aは脳梗塞後亜急性期のperi-infarct area において強く現れることが確認されたのです。そこで、虚血(※2)負荷後のアストロサイト(※3)培養において、大日本住友製薬のセマフォリン3A阻害薬を投与すると、活性化アストロサイトが制御されることが分かりました。

その他の研究結果から、脳梗塞後亜急性期のperi-infarct area で顕著に現れるセマフォリン3Aを機能阻害することで、pGSK3βに代表されるセマフォリン3A関連シグナル蛋白群の調整や、アストロサイトの活性化、アストロサイトから分泌されるエクソソーム(※4)の制御を介して、慢性期の軸索再生やラットの運動機能回復が促進されることが明らかになったのです。つまり、セマフォリン3A阻害薬が脳梗塞後の運動麻痺などの後遺症に対して、新規治療薬となる可能性があり、研究グループの今後の進展が楽しみですね。

  • ※1-軸索:神経細胞が持つ突起で、多くは各神経細胞体や太い樹状突起の基部から1本ずつ出ています。長く伸びて被膜に包まれ神経線維となるので、樹状突起に対して軸索突起又は神経突起とも云います。末端は分枝して次の神経細胞などと接合し、神経の興奮を伝えます。
  • ※2-虚血:末梢神経への血液供給が急激に不足する状態で、高度な局所的貧血と云えます。
  • ※3-アストロサイト:中枢神経系にあるグリア細胞の一つで、神経系の構築や細胞外液の恒常性維持、血液脳関門の形成などに重要な役割を果たす細胞です。
  • ※4-エクソソーム:細胞が出すカプセル状の突起のついた丸い形をした大きさは1万分の1㎜の物質です。私たちの体の中のあらゆる細胞が出しているので、100兆個以上あると考えられています。その中にはいろんな“メッセージ物質”が詰まっており、マイクロRNAと呼ばれるDNAの仲間で遺伝子の働きを制御するものもあります。

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