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Arm basis trainingを利用した脳卒中後の片麻痺に対する上肢リハビリ

脳卒中の後には様々な症状が残ることが多いですが、片麻痺はその中でも頻度の多い後遺症です。発症早期には麻痺した側の腕や足は全く力が入らない状態となり、回復過程では力は入り始めるもののうまくコントロールできずに目的に沿った使い方ができない、ということが多いです。

片麻痺に対しては様々なリハビリテーションの方法が開発されています。その中にArm basis trainingという、重度の麻痺に対する上肢リハビリとして有効性が認められている方法があります。

ここではArm basis trainingとは何なのか、その具体的な方法、根拠について紹介していきます。

arm basis trainingについて説明する医師

Arm basis trainingとは?

Arm basis trainingとは2001年にChristelEickhofというドイツの神経科学者により提唱された方法で、Thomas Platzが数多くの論文報告をしたことで世界中に広まっている方法です。
片麻痺の中でも特に程度が重い方に対して、スムーズな上肢全体の動きを誘発しようとする、腕の曲げ伸ばしなど大まかな運動を反復する方法です。
大まかな動きを達成するためには、肩や腕を動かすための筋肉がうまく協調して動かなければなりません。
繰り返し同じ動きを練習することで、筋肉の協調運動を引き出すと共に、筋力の向上、筋力のコントロールといった能力を向上させようとする方法です。

文献で有効性が明らか、随意性が向上する

Arm basis trainingは片麻痺に対するリハビリテーションとして、推奨グレードA(行うように強く勧められる、強い根拠があり、明らかな臨床上の有効性が期待できる)となっている、信頼性の高い方法です。
Platzらは脳卒中後の患者さんを二つのグループに分けて片方のグループにはArm basis training、もう片方には従来からの方法(ボバース法)を行ったところ明らかにArm basis trainingを行ったグループで改善の幅が大きかったと報告しています。
(実際には、一つだけの方法ではなくいくつかの方法を組み合わせてリハビリが行われます)

回復前の患者さんでは、自分で腕を動かそうとすると、曲げようとする筋肉と伸ばそうとする筋肉が同時に働いてしまいうまく動かなかったり、肘だけを動かしたいのに手や指が曲がってしまったり(共同運動といいます)、というような現象がおきます。
Arm basis trainingを行うことで筋肉のコントロールがつき筋力が向上すると、徐々に目的に沿った運動ができるようになります。これを、随意性の向上といいます。

脳卒中後の片麻痺の程度に関する分類方法

脳卒中などが原因で片麻痺になってしまった場合、発症後の一定期間、一定のレベルまで症状は回復します。脳がダメージを受けても一部が回復したり、まわりの部分がカバーして機能を補ったりするためです。
片麻痺の回復過程をステージとして評価する方法があります。ブルンストローム・ステージといいます。

ブルンストローム・ステージ

Ⅰ:力を入れようとしても全く動かない、ぶらぶらな状態(弛緩性麻痺)
Ⅱ:筋肉は収縮するようになるが、動きはわずか
Ⅲ:自分の意志で筋肉が収縮するようになるが、腕は全体で動いてしまい、関節ごとに別の動きはできない
Ⅳ:場所による別々の動きが少しできるようになる。しかし腕のつっぱりは強い
Ⅴ:腕のつっぱりがとれてきて、別々の動きがやりやすくなる
Ⅵ:細かい動きができるようになる

重度片麻痺を発症した患者さんのArm basis trainingを利用した上肢リハビリプログラム

Platzらは麻痺の程度によりリハビリプログラムを分けるべきだと主張しており、程度の軽い(あるいは回復が良好な)患者さんに対しては、Arm ability trainingという方法を提唱しています。
これは、指を素早く動かす運動や、握る動作、器用さや安定性を引き出すような運動を繰り返し行う方法で、ブルンストローム・ステージⅤやⅥの患者さんに行われます。
ここでは、重度片麻痺の患者さんに対するリハビリについて説明していきます。

弛緩性麻痺を発症した患者さんの上肢リハビリ

弛緩性麻痺は、ブルンストローム・ステージⅠに相当する、最も症状が重い状態です。自分の意志で筋肉を動かすことが全くできないため、リハビリは他人の力を借りて行うしかありません(電気刺激による筋肉運動が行われることもあります)。
また、弛緩性麻痺を起こしている患者さんは、発症早期であることが多いため脳卒中に対する治療が優先され、ベッド上で安静にしなければいけないことが多くなります。
リハビリの目的は、今後の回復を見込んで体力をできるだけ維持すること、関節が硬くならないように可動域を維持することです。

ブルンストローム・ステージ2に対するArm basis training

自分の意志で筋肉を少し動かすことができるようになってきたら、運動療法を開始していきます。Arm basis trainingは段階に応じて3つのステップに分けて行われます。

step 1:

腕の重みがかからない状態で、大まかな動きを練習します。仰向けに寝た状態や腕をセラピストが支えた状態で、肩や腕、指を曲げるように繰り返し練習します。
簡単に聞こえるかもしれませんが、この段階では腕の重みを除去してあげても、筋肉がうまく協調して動かないのですぐにできるようにはなりません。繰り返し練習することで、肘や手首を同時に曲げるなど大まかな動きが徐々にできるようになります。

step 2:

大まかな動きが肘や手首の可動域全体でできるようになったら、腕の重みがかかる状態(座った状態や立った状態)で動かす練習が始まります。腕の重みに対抗するだけの筋力や、バランスを維持するための協調運動が必要となるため難度はぐっと高くなります。
運動の種類はこれまでの段階と同じで、大まかな動きの練習を行います。

step 3:

腕の重みがかかっても、大まかな運動ができるようになったらいよいよ最終段階で、複数の関節を動かす目的に沿った運動ができるように練習していきます。例えば、目の前のものをつかんで引き寄せるために、肩を動かして腕を前にだし、肘を伸ばして手を物に近づけて、指を曲げて掴む、といった具合です。

Arm basis trainingを利用した専門的リハビリ

脳卒中後の片麻痺は、下肢に比較して上肢の回復が乏しいと言われています。脳卒中で片麻痺になった患者さんが実用的に手を使えるようになるのは、リハビリ病院に入院した患者さんの30-40%程度とされています。
そのため、発症早期に上肢の麻痺が強い場合にはそこの回復を目指すというよりは、動く側の手を使ってどのように生活するか、という点に重きを置かれたリハビリテーションが行われる事になります。一度傷ついた脳の神経細胞は元に戻ることはない、と信じられているからです。

しかし、脳卒中後片麻痺となっても一定のレベルまで回復することは、ここでも説明した通りです。この回復する能力のことを、脳の可塑性(かそせい)といいます。
脳の可塑性を最大限に引き出すための方法、それが今大きな注目を集めている再生医療です。
神経細胞の再生や回復を促すために幹細胞を移植し、エビデンスのある最先端のリハビリテーションの手法を組み合わせて行う、それがニューロン(神経)とテクノロジーの掛け合わせであるニューロテックです。

当院で提供しているニューロテックではArm basis trainingだけではなく、経頭蓋的磁気刺激療法、低周波療法、ロボット療法 を使用した専門的なリハビリを行い、再生医療の効果を最大限に引き出しています。

まとめ

上肢の麻痺の程度が強い患者さんに対して行われる、Arm basis trainingについて解説しました。有効性が認められている信頼性の高い方法ですが、麻痺の状態を正しく評価した上で正しい方法で行われる必要があります。専門的なリハビリを希望する方は、専門施設へ問い合わせてみることをお勧めします。

参考文献
重度上肢運動麻痺を呈した脳卒中患者に対するエビデンスに基づく治療法の選択と実践効果,日本臨床作業療法研究1, 2014
Impairment-oriented training or Bobath therapy for severe arm paresis after stroke: a single-blind, multicentre randomized controlled trial. Clinical Rehabilitation 19, 2005

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この施術ページの監修医師

貴宝院 永稔

貴宝院 永稔(きほういん ながとし)

医療法人慶春会 福永記念診療所 部長
株式会社ニューロテックメディカル 代表取締役
株式会社セルリンクス 代表取締役
医療法人交和会 理事長

学歴・職歴

平成15年3月
大阪医科大学卒業
平成15年5月
大阪医科大学附属病院にて初期研修
平成17年4月
大阪医科大学附属病院にて初期研修 修了
平成17年5月
大阪医科大学(リハビリテーション科)レジデント就任
平成19年3月
大阪医科大学(リハビリテーション科) 退職
平成19年4月
大阪医科大学大学院医学研究科(リハビリテーション科)入学
平成21年4月
医療法人伯鳳会 はくほう会セントラル病院 入職
平成23年3月
大阪医科大学大学院医学研究科卒業
平成30年2月
福永記念診療所 部長に就任

資格

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