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小刻み歩行とは

通常の歩行は、意識することなく両方の足をそれぞれタイミングよく、適切な歩幅で動かすだけでなく、手の動きや体重移動をスムーズに行っていますが、小刻み歩行は、このような細かい動きをうまく調節できない人にみられる歩き方です。
大きい歩幅で大胆に歩くことが難しいため、小さいステップを小刻みにつないで歩くことになります。
小刻み歩行は、多発性脳梗塞、パーキンソン病や水頭症でも認められることが知られています。

小刻み歩行の高齢者

小刻み歩行の原因

スムーズで細かい運動を調節できなくなることが、根底にある小刻み歩行の原因です。

例えば、多発性脳梗塞で特徴的な歩き方である小刻み歩行がみられるのは、脳梗塞が発生する場所と関係があります。
多発性脳梗塞は、大脳基底核に発生しやすいことがわかっていますが、この大脳基底核は、大脳が司る運動の機能を調節する働きがあります。
大脳基底核が障害されていると、タイミングよく手足を動かす細い調節や体重の移動などをうまくすることができなくなります。
したがって、大脳基底核が障害されていると、そのような調節をする必要がない、小さい歩幅で前のめりになって歩く小刻み歩行となってしまうのです。
それでは、小刻み歩行の原因となる「多発性脳梗塞」「パーキンソン病」「水頭症」について詳しく見ていきましょう。

多発性脳梗塞とは

多発性脳梗塞は慢性的な高血圧などの持病がある人に、1〜1.5cm程度と小さいラクナ梗塞が、大脳の深いところである大脳基底核や放線冠と呼ばれる部位に多数できます。少しずつ、そして段階的に症状が進みます。
特徴的な症状として、認知症、言語障害、歩行障害、嚥下障害などがあります。この歩行障害は、小刻みに歩くという特徴があります。
これは運動を調節する機能を有する大脳基底核が障害を受けていることが、その原因です。

パーキンソン病とは

パーキンソン病は、ドーパミンと呼ばれる、円滑な運動を行うために必要な脳内化学伝達物質を生成する神経細胞が減少する病気です。ドーパミンの量が減少すると、脳の活動が異常になり、運動障害などのパーキンソン病の症状が現れます。
パーキンソン病の初期段階では症状は徐々に始まり、まず顔の表情が見られなくなることがあります。手が震えること(振戦)から始まることもあります。
また体の動きが硬くなったり、鈍くなったりすることもよくあります。歩くときに腕が振れなくなることもあります。さらに声が小さくなったり、言葉が不明瞭になったりすることもあります。パーキンソン病の症状は、時間の経過とともに進行します。
パーキンソン病の歩行障害の特徴は、小刻み歩行です。動きが緩慢になるだけでなく、なかなか動き出せない、方向転換が難しくなるなどの症状もみられます。

パーキンソン病とは?
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水頭症とは

水頭症とは、脳の奥深くにある脳室に液体(脳脊髄液)が異常に溜まった状態です。この過剰な液体によって脳室が広がり、脳の組織を圧迫します。
脳脊髄液は、脳や脊椎を保護する無色透明の液体ですが、通常は脳室のなかを流れ、脳と脊髄を洗浄した後、血流に吸収されていきます。
しかし、脳脊髄液の正常な流れや吸収が阻害されると、脳脊髄液が溜まってしまいます。脳脊髄液が溜まりすぎると、脳が正常に機能しなくなって症状が出てきます。
水頭症に伴う症状には、頭痛、意識障害、歩行障害、協調性やバランスの障害などがあります。特に高齢者にみられる特発性正常圧水頭症という病気では、認知症、尿失禁と合わせて、小股で小刻みに歩く歩行障害が特徴的な症状です。

小刻み歩行の症状

歩き方の特徴は、歩幅が非常に小さく、膝をあげることなく、足を地面にするようにして小刻みに歩くことです。多くの場合、前傾姿勢となり手をあまり振らずに歩くこと、バランスをとるために足先を開き気味で歩くことも、小刻み歩行特徴のひとつです。
また、歩き始めるといった運動の開始が困難になったり、思ったところで立ち止まったりするなどの調整も難しくなってしまうことがあります。

小刻み歩行の転倒リスク

小刻み歩行は上記の通り、前傾姿勢で足を地面に擦るような歩き方のため、通常の歩行と比較するとバランスがとりづらく転倒のリスクが高い歩行方法です。
特に立ち上がる際や、階段などの段差などには特に注意が必要です。

小刻み歩行の高齢者が階段を上っている画像

小刻み歩行の転倒予防

目線を上げ、前方をしっかりと見て歩行しましょう

小刻み歩行は前傾姿勢になりやすく、歩行中も自然と目線が足元に行きがちです。
目線を上げることで、歩行時に必要な後ろに蹴りだす筋肉の働きが良くなります。

足踏みをしてから歩行を開始しましょう

歩き始めるといった運動の開始が困難になることがあると上記で解説しました。
そのため、急に歩行を開始するのではなく、まず足踏みをしたうえで歩行を開始することで、歩行開始時の転倒リスクを予防することが可能です。
何かにつかまって足踏みをするのも良いでしょう。

小刻み歩行の治療

小刻み歩行の治療は、原因となる病気を治療することがまず大切です。
残念ながら、多発性脳梗塞については現在進行を遅らせるために高血圧などの基礎となる病気をコントロールすることはできますが、出現している症状を完全に治すことは困難です。
パーキンソン病は、完治させることはできませんが、薬によって症状が大幅に改善する場合があります。
場合によっては、脳の特定の領域を調整して症状を改善するために、手術をすることもあります。
水頭症は、脳内に蓄積している脳脊髄液を腹部に逃すシャント術という手術を行うことが治療法のひとつです。
この他にも脳内に新たな脳脊髄液の出口を作る、脳底開窓術という手術を行うこともあります。手術を行うことで症状の進行は抑えられ、すでにある症状もある程度は改善する可能性があります。

小刻み歩行のリハビリ

多発性脳梗塞に伴う小刻み歩行のように、薬を用いた治療やリハビリをすることで、劇的な改善が望めるものではない場合、リハビリが重要になってきます。
ただリハビリをすることで、スムーズに歩くレベルまで改善することは難しい可能性があります。
そのためさまざまな工夫が必要となります。
例えば、歩行をできるだけスムーズに促すために歩行器を使ったリハビリに取り組むこともあります。
またパーキンソン病の患者さんに対し、緊張を和らげるリラクゼーションを行った上で1〜2Hzの音刺激に合わせて足踏みを繰り返し、その後続けて歩行する訓練を繰り返すと、小刻み歩行が改善したとの報告があります。
(出典:外山治人ら. すくみ足・小刻み歩行を呈するパーキンソン病患者に対する歩行訓練について. 理学療法学. 1991;18:521-7)
実際の臨床現場では、オーダーメイドでリズムや音を利用したり、視覚的に等間隔で引かれた線を利用したり、練習が効果的方となる方法を色々模索し、日常生活上でも応用して貰うことになります。

まとめ

小刻み歩行についてご紹介しました。
残念ながら完全に元どおりになるまで改善が望めないこともありますので、歩行の改善に取り組むことと合わせて、例えば家のなかの段差をなくす、スリッパをはかないようにするなど、つまづいて転倒しない配慮も必要になります。
もしお困りのことがあれば、少しでも安全に暮らすことができるよう、主治医やリハビリの担当者に相談するとよいでしょう。

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この施術ページの監修医師

貴宝院 永稔

貴宝院 永稔(きほういん ながとし)

医療法人慶春会 福永記念診療所 部長
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

学歴・職歴

平成15年3月
大阪医科大学卒業
平成15年5月
大阪医科大学附属病院にて初期研修
平成17年4月
大阪医科大学附属病院にて初期研修 修了
平成17年5月
大阪医科大学(リハビリテーション科)レジデント就任
平成19年3月
大阪医科大学(リハビリテーション科) 退職
平成19年4月
大阪医科大学大学院医学研究科(リハビリテーション科)入学
平成21年4月
医療法人伯鳳会 はくほう会セントラル病院 入職
平成23年3月
大阪医科大学大学院医学研究科卒業
平成30年2月
福永記念診療所 部長に就任

資格

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